砂漠で溺死

本と映画を、ネタバレ全開で書きます。

選択するということの、圧倒的な。

村上春樹の「カンガルー通信」て作品(もしかしたら違うかもしれない)に、

「ぼくの願いは二つのところに同時に存在したいということだけだ」みたいな言葉が出てきて、ああ、と思ったことがある。

昔からあれこれと思い悩む性格で、ひとつのものを選択したらもう一方のものが急に惜しくなり、だから決断するということはいつも重荷だった。

それでそのうち、決断すること自体が腹立たしくなってきた。なぜどっちも選んではいけないのだろう、なぜそこで可能性を制限しなくてはいけないのだろうと。

現実には大学や会社にいくつもはいったりは不可能だけれど、なんだかそれがとてつもなく理不尽なことに思えた。なぜ一通りの人生しか生きられないのだ。

存在の同時性、しかし、自分が複数の生を同時に享受できるとしたら、どうなのだろう。全員無職になりそうな気もする。

一回性の限りある生命を大事に生きなければならないというのは、言っちゃえばありきたりなことで、だからこそ説得力も暴力的なのだけれど、それでも、一人の人間としてしか生きられないのはなんとなく悔しい。人種や性別や年齢に否応なく縛られていることで、既に何かに負けている気がする。いや、何かはわからないけども。